【異人たちの館】感想文/私の愛する狂人

折原一【異人たちの館】を読んだよ!
以下、頭の悪いネタバレ感想文。













わたし、狂人の話が好きなんです。
特に、狂った美学や価値基準を持っていて、それが社会的に受け入れられない事を承知しながら、美学を貫き通してくる“潔さ”のある狂人。

折原一の本には度々そんな狂人が登場する。
【倒錯のロンド】の小説に取りつかれた人々、【天井男の奇想】の天井男…
折原一といえば叙述トリック、密室、だけど、私は折原一の書く“狂人”たちが大好き。

【異人たちの館】で最も潔く狂っていたのは、島崎葵かなあ。
小松原淳も大概やばいけど、彼の狂気はただ自己愛が強いだけのように感じる…狂気に対してこういうのはおかしいかもしれないが、“狂い方が不純”という印象だ。
その点、島崎葵はやべえ。「息子の復讐のために始めたけど、そんなことより私の創作意欲が抑えられねえ…!腕が唸るぜ!!え?は?息子?それが何か?」みたいな。
そんなわけなので、島崎葵をもっと掘り下げてほしかったなぁ~!というのが私の1番の感想です。
いや、分かってるけど。島崎葵は本作の主人公じゃないし。

島崎潤一はひたすら可哀想な男だった。
あらゆる人々の“狂気”の糧にされて終わってしまった。搾取され追い詰められて“狂人になってしまう”様子は私の好むものではないので、読んでいて心が苦しい…。
ちなみに、島崎潤一のビジュアルを映画【去年の冬、きみと別れ】の那雲(岩田剛典)で脳内変換しながら読んだらメチャクチャ良かったことを記録しておきます。
本作映画化の際はぜひ岩田剛典を起用して貰いたい。

ところで、ユキは彼の子どもを身籠っていたようだけど、本当に彼のことを愛していたのだろうか?それだけがよく分からなかった。
(というか、ユキは徹頭徹尾“つかみ所の無い美女”として描かれており、マジでつかみ所が無いから全く共感が出来ず、理解も出来なかった。
しかし“過干渉な母親たち”は非常に生き生きとしていた。そんな女たちの対比から折原一氏の女性観が見えてきて、そういう意味では面白い描かれ方だった。)


個人的に好きなシーンは、ケントが戻ってきたと思い、ビビりながらケントの白骨死体を確認する小松原淳です。
「ちょ、ほら~!死んでるじゃ~ん!んも~っ!」みたいな感じで笑っちゃった。(全然そんな文章じゃないけど!)

折原一の本、シリアスの度が過ぎてくると段々面白くなってきちゃうところがなんかもうすごい好きです。
【天井男の奇想】のラストのあたりとかBGMでHIGHER GROUND(※ハイロー主題歌)でも流れているのか?って勢いゴリゴリで本当に楽しかった…機会があれば【天井男の奇想】の感想文も書きたいです。
おわり